近頃はインバウンドの影響もありリゾートホテルの設計の仕事が多いのですが、その傍ら、日本建築のこれからの在り方についての探求を進めています。
画像は、以前ご依頼を頂いた江戸期の古民家の再生案件で検討した計画案です。
耐震強度を高めつつフレキシブルな大空間を確保するため、桁下の耐震壁ラインに加え、X-Y軸に対し45度に振った耐震壁を追加し、従来の「和」や「古民家再生」とは異なる方向性を打ち出しています。
伝統構法による古民家再生を中心として、安全性能を担保した上で実現できる、日本建築の様々な可能性や魅力を探求し、ひり出したデザインや計画手法、商業的な活用方法などを提案していきたい、と考えています。
<古民家・伝統構法について>
(ご興味お持ちの方、良かったらお読みください)
現在、木造住宅の多くは「在来構法」で建てられていますが、これは名前に反し、近代になってから欧米の構法を参考としながら考えられた構法です。
それ以前は「伝統構法」で建てられており、古民家などとして現在でも数多く見ることができます。
在来構法では壁を筋交や合板で補強し「剛」な強度で地震力に対抗するのに対し、伝統構法は柱・梁の貫構造や竹小舞下地の土壁によってしなやかに変形し地震力を吸収します。
さらに、伝統構法による大架構は、在来構法では実現できない開放的でフレキシブルな空間を実現でき、住宅以外の様々な用途やスタイルへの転用も可能とします。
このようなメリットもある伝統構法は、残すべき大切な日本文化の一つだと思うのですが、現代技術と馴染みにくく、対応できる大工さんも非常に少ない状況です。さらに、構造計算含む耐震強度の評価や耐震設計、耐震改修工事などの敷居がとても高くなります。国交省も伝統構法に関する法制度の整備などの必要性を提起しています。このような背景もあり、耐震改修含めると、古民家再生には、新築以上の費用がかかるものと覚悟した方が良いかも知れません。しかしながら、インバウンドマネーも当てにできる(!?)商業用途へのコンバージョンなら、比較的馴染みやすいかもしれませんね。